ナオミ通信 細菌とともに生きる ~口腔内細菌と全身のかかわり~ ③口腔内細菌と全身疾患

エリカ

歯周病で有名なポルフィロモナス・ジンジバリスが腸を通過するとき、どんなことが起こっているのかな?

私たちの腸内にも様々な細菌が存在し、腸の粘膜の上に塊のような密な状態で生息しています(腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう))。健全な腸内細菌叢では、私たちの免疫機能を維持したり、食べ物とともに通過していく病原細菌の腸管内侵入を防いだり、免疫機能を調節したり、からだにとって役に立つ働きをしています。
 しかし、抗菌薬を飲んだり、脂肪の多い食事を摂り続けたりすると有害な物質をつくる菌が増えて腸内細菌叢のバランスが崩れ、細菌毒素の量が増えたり、からだに悪影響のある代謝物が作られるとともに、腸のバリア機能が崩れてしまいます。すると密接にくっつきあっていた腸のバリア(腸管上皮)に隙間ができ、その隙間から有害な物質が腸から吸収されてしまいます。

腸で吸収されたものは肝臓に運ばれ、さらに血流にのって全身に運ばれます。細菌毒素も同様に運ばれ、全身の様々な場所に届き、いろんな病気と関連していくのです。

  • 関連疾患:糖尿病、動脈硬化症、狭心症・心筋梗塞、早産・低体重児出産
エリカ

歯周病が全身に関わるように様々な病気に関連しているのね。

とくに注目されているのは、ポルフィロモナス・ジンジバリスと糖尿病の関係です。
②でお話したように、歯周病の炎症部分では「炎症性サイトカイン」などの物質がつくられます。また、この細菌により腸内細菌叢が変化すると、腸のバリア機能が損なわれ、細菌毒素が体内に入り、炎症を起こします。これらがインスリンの働きを妨げてしまいます。つまり、歯周病の炎症を放置しておくと、常時この物質を体内に取り込んでしまうことになり、血糖値の高い状態が常に続くことで、糖尿病になってしまうのです。

ヒデヒコ

なにか予防のためにできることはないのかな?

全身疾患とかかわりのある口腔内細菌については、

  • ① バランスのとれた食事をとること
  • ② 砂糖をとりすぎないこと
  • ③ ダラダラ食べないこと(間食ふくめ飲食物が胃のなかに滞留している状況をなくすこと)
  • ④ お口の中を清潔に保つこと

という心がけが重要です。 
口腔内を適切な環境に整えておくことが、様々な疾患の予防につながるのです。無理せず、ブラッシングで清潔を保てる程度の細菌数にしてあげることが大切です。

エリカ

やっぱり歯みがきが大切なのね!

バランスのよい食事や生活リズムは、口腔細菌だけでなく腸内細菌にも良い影響を与えます。口腔内細菌叢をバランスよく保ってあげることで、腸内細菌の環境も整い、ひいては自分自身の健康にも寄与するということなのです。
すべては、つながっているのです。

ヒデヒコ

ヒトも細菌も、ストレスなく生活できる環境が大切だね。

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