- エリカ
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ねえ、手を洗うと、汚れや見えない細菌もきれいに落とせるじゃない?
お口の中も歯みがきで細菌がいなくなるのかな? - ヒデヒコ
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えっ、そこまで考えたことはなかったなあ。
ナオミ先生に聞いてみよう。
私たちのお口の中には約1000種類もの細菌がいます。しかし、その全てが全ての人の口の中にいるわけではなく、人の口の中には平均して250種類程度の細菌がいると考えられています。そのうち約70~100種類の細菌は、だれのお口にも共通して存在していますが、それ以外の細菌は、本人が育った環境や食生活によって変化します。全部合わせると口の中からは、1000種類もの細菌が見つかります。
このように、ある場所に存在している細菌の集団全体を「細菌叢」といいます。
また、細菌についてのさまざまな研究が進められるなかで、「善玉菌」「悪玉菌」という単純な表現は必ずしも正しくないと考える研究者が増えています。赤痢菌などの明らかな病原細菌を除き、細菌は自分がいる環境によって、私たちにとって「良いこと」をするか、はたまた「悪いこと」をするかが変わるのです。
その細菌が私たちにとって「良いこと」をしてくれるように、体内の環境を整えてあげることが大切です。
- エリカ
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私たちの体内環境によって細菌のはたらきやバランスが変わるのね。
- ヒデヒコ
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そういえば、歯周病の原因も細菌だったかな?
歯周病は、ポルフィロモナス・ジンジバリスという細菌が原因菌として知られています。しかし、実験で、無菌のマウスにこの細菌だけを入れたところ、なにも起こりませんでした。一方、普通に生活している健康なマウスにこの細菌を入れたところ、細菌が歯を支える骨を溶かしていきました。
こうした実験によって、ポルフィロモナス・ジンジバリスは、
- ①お口の中の細菌のバランスをくずす
- ②お口の中の細菌叢を変化させる
- ③炎症を起こしてお口の中の環境を変える
- ④さらに細菌叢を変化させる
という段階を踏んで、歯周病を引き起こすということが分かってきました。③と④が悪循環になって病気が進行していきます。
つまり、歯周病はある特定の菌のみで起こる病気ではなく、お口の中の細菌叢のバランスが崩れることで、私たちにとって悪い菌が増え、それらが炎症を起こして骨を溶かし、歯周病になっていくということだったのです。
- ヒデヒコ
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なるほど、そうなんだ!
むし歯も、ミュータンス連鎖球菌が関わっていることが知られていますが、最近の細菌研究では、ミュータンス連鎖球菌が存在しないむし歯も発見されています。よって、むし歯もある特定の細菌のみが原因ということではなく、多くの細菌の関わりによってできてしまうということがわかってきました。
- エリカ
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ところで、お口の中の細菌はずっとお口の中だけにいるの?
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いいところに気が付きましたね。
実は、口腔内細菌は全身に運ばれていることもわかってきました。
次回、その理由をお伝えします! - ナオミ先生