インタビュー時年齢:63歳(2016年2月24日)
子供の頃から歯が弱く、母はそれを母乳の出が悪かったからだと考え、気にしていた。自分でも歯が弱いことは認識していたが、甘いものを食べた時なども歯をよく磨かなかったため、たびたびむし歯になって、年に1~2度は歯科に通院していた。痛みが出ても、最後まで我慢して、ぎりぎりになってから行くので、かなり悪くなっていることが多かった。20代の頃イギリスに留学していたときに、現地の歯科にかかり、初めて歯を抜いた。一番最近では10日ほど前に抜いたばかり。これまでに4~5回抜歯しており、さらにクラウンをかぶせたり、差し歯にしたりしている箇所がある。
30年近く前に歯科医師である妻と結婚した。それ以来、妻からは歯磨きや口臭のコントロールについて、たびたび注意されている。大学教員という仕事がら、人前に立つことも多いので、口臭が気になることがあり、朝夕の歯磨き以外にも1日2回ほど薬をつけて歯磨きをしている。最近は歯が全身の健康に影響するという話をメディアで耳にすることがあるが、これまではからだの他の部分に比べて、歯だったらぎりぎりまで待っても大丈夫だろうと気持ちがあったことは否めない。今はまだ入れ歯はないが、両親も自分の年には入れ歯だったこともあり、いずれはそうなってしまうのではないかと心配になる。
元来、肉や魚介類、野菜などが好きだったが、現在は思うように噛めないので、繊維質のものを食べるのには時間がかかり、炭水化物が多くなりがちだ。かつてのように、塩せんべいや野菜などをばりばりと食べたいと思う。歯がないと味覚にも影響するようで、他の人が美味しいと食べているものを自分は美味しく感じないことがある。これまで抜けたのは奥のほうの歯だったので、硬いものを食べる以外で不便を感じることはなかったが、前歯が抜けるのは困る。見た目のこともあるが、自分は仕事で英語を使うことが多く、前歯がないとthの発音ができなくなってしまうなど、英語のスピーキングに大きな支障をきたす。
イギリス人はsnaggleteethといって、いわゆる乱杭歯の人が比較的多いが、アメリカのドラマや映画などでは、めったにそういう人を見かけない。アメリカのテレビ番組に出てくる正義の人で歯が汚い人はまずいないと言ってよい。歯科医療費が高い、という要因もあるかもしれないが、アメリカ人は歯の状態に非常に気を遣い、それはその人の人格のイメージにも影響するからであろう。日本では八重歯があってもそれほど悪いイメージはなく、かえって可愛い印象を与えることもあり、歴史的にはお歯黒をしていた時代もあったりと、やはり歯には文化的な背景が関連していることがわかる。