インタビュー時年齢:42歳(2016年12月6日)
娘は歯の生え始めには特に問題がなかったが、いわゆるイヤイヤ期に入ると歯磨きを嫌がるようになり、ちゃんと磨かせてくれなかった。2歳児歯科検診ではむし歯が4本、うち1本はC2(むし歯がエナメル質の下の象牙質まで進行した状態)で、「2歳では100人に1人」と言われショックを受けた。もともと完全母乳でジュースや市販のお菓子などは与えていなかったが、ママ友たちとの公園での毎日のおやつ交換をうまく断れなかったのがむし歯の原因だと思った。自分自身は歯が丈夫で、自分の母親からも「子どもはよだれがあるから磨かなくても大丈夫」といわれていたので、そういうものかと思い込んでいた自分を責めた。
さらに歯科衛生士の友人に2歳児はネットでぐるぐる巻きにして、手足を押さえつけて治療すると聞き、恐ろしくなってノイローゼのようになってしまい、インターネットで情報を調べまくった。SNSで母乳とむし歯について書かれた本に出会い、著者の歯科検診医(A医師)に診てもらったところ、C2ではなく丁寧に磨いていればすぐに治療する必要はない、と言われて救われた。その後は3カ月ごとに検診と歯磨き指導を受けながら経過観察を続け、娘が5歳になった今年の春、A医師に紹介された歯科医院で治療を受けた。
むし歯が見つかったのがきっかけで、いつも行く公園でのママ友付き合いが精神的に負担になり、自転車に乗って遠方の公園を探しては通うことを繰り返しているうちに、ぎっくり腰になってしまった。入院中に保育園の緊急一時保育を利用したのがきっかけで、保育園に入園することになった。それまでは保育園より幼稚園の方が行き届いた世話をしてもらえると考えていたが、入ってみたらおやつも手作りで自分の考えと共通しており、生活にも余裕ができ、むし歯を何とかしようと考えるのではなく、むし歯と生活の折り合いをつけていくことが大事なのだと分かってきた。
同じものを食べていてなぜうちの子どもだけむし歯になるのか、妊娠中の食生活がいけなかったのか、などと悩んでいたが、A医師にはむし歯には遺伝が影響するといわれた。歯が弱く、30代で入れ歯になっていた夫を責めたこともあったが、さいわい夫も夫の家族もおおらかで、神経質な自分を受け止めてくれて、義母は娘のおやつにも気を遣ってくれる。
当初は娘のむし歯にパニックにもなったが、娘を守るのは自分という意識が強すぎて、おやつや公園などにこだわりすぎたと思う。こどもへの言い聞かせをないがしろにしてきた自分の子育てのしかたも反省している。娘には「歯の質が弱い」ことも説明してあり、10歳までは仕上げ磨きも続けるつもりだが、果たしてさせてくれるかどうか。いろいろな経験を経て、今では7割がた「むし歯ぐらいでよかった」と考えられるようになった。ここまで来るのに3年半かかったのかと思うと感慨深い。