インタビュー13インタビュー時年齢:76歳(2017年2月28日)

#06 口から食べられるようにしようと、「はい、ゴックン」と誤嚥に注意しながら一日中、妻に食べさせていた。重湯から始めたが、今では柔らかく煮たものはほとんど食べられる

再生時間:03:45 アップロード日:2017年12月04日

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インタビュー

1日中口に何か食わしてたよ、俺。あのー、量を、経管のやつを量を減らして口から入れるように頑張って、だんだんだんだんやめちゃったの。あのー、管から入れるやつはね。やっぱり口から入れると違うんだわなあ。あのー、ちょっと下痢気味なのが硬いのが出るようになったわな。口から入るやつはな。確かにあれ、流し込んじゃうんだから毒だよねえ。管で流し込んじゃうんだから、胃袋へ、直接。
 胃ろうっていうのは腹から穴開けるっていうから、直接胃にもう直結しちゃうんでしょ、あれ、多分。もっと下痢するかも分かんないなあ。「ああ、これは先々胃ろうだなあ」。それで終わりだったなあ。そのー、病院では。

ほんとに今日か明日かっていう人をどうにか助けて、安定しちゃうと――胃ろう状態が安定期なのか。あの、誤嚥しないように気を付けながら食べさすっていうのは、自慢じゃないけど俺、看護師なんかよりうまいと思うよ。母ちゃんがこういうふうに生還したわけだから。
 あのー、看護師にしても1人何人ぐらい受け持ってっか知らないけど、見てると大変だから、そんなにいちいち、「はい、ゴックン」「はい、ゴックンよ」なんてなかなか難しいだろうなあ。で、「はい、今度水」。水で飲み込んでからもう一回、「おかゆだよ、今度重湯だよ」とか言いながらさあ。「今度は大豆のすったやつ」とか、そういうふうに言いながら食べさすっていうのはなかなか看護師さんもできないわなあ。点滴の量が減れば交換しなきゃいけない患者さんとかいっぱい抱えてるわけだから。あのー「はい、お茶」、「はい、重湯」、「これは何かをすりつぶしたやつよ」なんて、おかずでしょ。みんな何か液状になってるやつをさあ、スプーンで飲ませるっていうのは付きっきりだからね、30分ぐらい。だから相当な芸当だよねえ。だからあれ、医療機関では、医者はねえ、めんどくせえからね、胃ろうにさしちゃうんだよ。分かるよ。だけどさ、無理ない話なんだわな。そこまで見れないよう。「あああ」なんて言ってさあ、赤ん坊みたいなんだもん。「はい、ゴックン」なんてな。ええ、母ちゃん。あれ、家族だとかさあ、その専門の人じゃなきゃ。

――今は、そのー、すりつぶしたりとかしないでも食べられるんです?

食べられる。

――ああ、そうですか。

コロッケなんかもお湯に浸したりな。

(妻)ほうれん草も食べられる。

ほうれん草、ちょっと軟らかめにゆでて、あのー、芯じゃない軟らかいほう。

――葉っぱのところ。

葉っぱのほう。

(妻)ちゃんこ鍋みたいにしてたら食べれる。

――うん、何?

ちゃんこ鍋ふうに。

――あ、ちゃんこ鍋ふう。ああ、そう。

だから、あのー、鶏肉の団子にしたのと、つみれとかさあ、ボールのさつま揚げみたいなのあんでしょ。あれをぶち込んで、大根とかニンジンとか白菜とか、麺つゆで煮ちゃうんだよ。あれが一番喜ぶなあ。

プロフィール

インタビュー13
インタビュー時年齢:76歳
(2017年2月28日)

首都圏在住。結婚した息子がひとり。父親が製菓会社を営んでおり軍需工場にも卸していたので、戦時中も終戦直後も甘味には不自由しなかった。子どもの頃からむし歯が多く、40代で総入れ歯になったが、歯医者以外には罹ったことがないほど身体は丈夫。定年退職後10年間介護車両の運転手として働いた経験から、機械に頼って生かされることについて思うところがあり、妻(インタビュー14)の介護では胃ろうをせずに、口から食べられるようにすることを頑張ってきた。