キョウコ

歯周病って知っているかしら?
今日は私がお口と体の健康の関係について話すわね。

聞いたことはあるけど、詳しくは知らないなぁ...。

ヒデヒコ

全身の健康に影響する「歯周病」って何?

歯周病の正体は細菌感染症

歯を失う最大の原因が歯周病です。歯周病はポルフィロモナス・ジンジバリス菌などの細菌(歯周病菌)が増えることによって起こる病気です。
歯みがきが不十分だと、歯の表面にネバネバとした歯垢(プラーク)がつくられます。この歯垢は細菌のかたまりで、歯周病菌も歯垢の中で増え続け、炎症を起こして歯を支える組織(歯周組織)を破壊していきます。

  • 健康な歯でも、歯と歯肉の境目には1~2mm程度の溝(歯肉溝)があります。この溝に歯垢がたまって歯ぐきが炎症を起こし、腫れをくり返すと徐々に溝が深くなります。これが「歯周ポケット」です。

歯周病は静かに進む

歯周病の初期段階では自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行していきます。このような病気を「サイレント・ディズィーズ(静かな病気)」といいます。成人の約8割が歯周病になっているにもかかわらず、自覚している人が少ないのはそのためです。

キョウコ

歯周病は以前「歯槽膿漏」と呼ばれていたの。
シニア世代では、歯槽膿漏のほうが耳慣れているかもしれないわね。
重度の歯周病まで進むと、むし歯になっていない歯でも失うことがあるのよ。

それは怖いね。
具体的に歯周病ってどのような症状になるのかな?

ヒデヒコ

歯周病の進行と症状

  • ① 歯肉炎

    歯肉溝(仮性ポケット)の深さは2~3mm
    歯肉溝に入り込んだ歯周病菌によって、歯ぐきだけが炎症を起こしている。歯ぐきの縁が部分的に赤く腫れるが、自覚症状はほとんどない。
  • ② 軽度歯周炎

    歯周ポケットの深さは2~4mm未満
    炎症が進行して、歯肉溝は歯槽骨の一部が吸収した歯周ポケット(真性ポケット)になる。歯ぐきは赤く腫れ、触るとプヨプヨする。出血しやすい状態が続く。
  • ③ 中等度歯周炎

    歯周ポケットは4~6mm
    歯槽骨の吸収が進み、歯がぐらつくようになる。歯の根元が露出しはじめるので、歯が長くなったように見え、膿の排出や口臭も現れる。
  • ④ 重度の歯周炎

    歯周ポケットは6mm以上
    歯を支える歯周組織が破壊され、歯根が露出。歯ぐきからは膿や血が持続的に出る。最終的には歯槽骨が大きく失われ、歯がグラグラして自然に抜け落ちる。

なるほど。いつまでも健康な歯でいたいよね。

ヒデヒコ
キョウコ

歯周病の怖さは、歯を失うだけではないの。歯周病と全身の病気とのかかわりを説明するわね。

歯周病と全身のさまざまな病気

  • 糖尿病
    歯周病の進行により産生する炎症性物質が血液中に入るとインスリンの働きを低下させるため、血糖値が下がりにくくなります。
  • 心臓病
    歯周病が引き起こす動脈硬化により、心臓に血液を送る血管が狭くなったり(狭心症)、詰まったりします(心筋梗塞)。
    また、心臓の内膜に歯周病菌がつくと、心内膜炎を引き起こし、命にかかわることもあります。
  • 骨粗しょう症
    骨密度が低くなり、骨がもろくなる病気。歯周病によって産生される炎症性物質が全身の骨の代謝に悪影響を及ぼすためと考えられています。
  • 肥満
    歯周病が進んでいる人はメタボリックシンドロームの発症が1.6倍高まることが報告されています。
    (メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に加え、高血糖、高血圧、脂質異常などの動脈硬化の危険因子が2つ以上重なった状態をいいます。)
  • 脳梗塞
    脳梗塞とは脳の血管が詰まったり、心臓にできた血栓が脳に送られて血管が詰まったりする病気です。歯周病にかかっている人は、そうでない人の約2.8倍脳梗塞になりやすいという報告があります。
  • 認知症
    歯周病が引き起こす動脈硬化は、脳血管性認知症の原因になる可能性があるとされています。また、アルツハイマー型認知症との関連も明らかになりつつあります。
  • 誤嚥性肺炎
    歯周病菌などのお口の中の細菌が唾液や食べ物といっしょに誤って気管に入ると、肺炎発症のリスクが高くなります。
  • 関節リウマチ
    手足の関節が腫れて、痛みやこわばりが起こる病気です。多くの研究により、歯周病の人は関節リウマチのリスクが高いことがわかっています。
  • 低体重児出産・早産
    歯周病によって産生された炎症性物質が血液中に入ると、低体重児出産が起こりやすくなります。また、血液中に子宮の収縮を早める物質が生まれるため、早産も起こりやすくなります。

このほか、がんや慢性腎臓病(CKD)、非アルコール性脂肪肝との関連性もわかってきました。今後はさらに多くの病気と歯周病の関係が明らかになってくるでしょう。

え?歯周病になるとこんなに色々な病気にかかるリスクがあるのかい?

ヒデヒコ
キョウコ

そうよ。さらには「むし歯」の原因菌も身体の健康に影響を及ぼすのよ。

「むし歯」の原因菌も全身に深刻な影響を及ぼす

歯周病と全身のさまざまな病気

むし歯を引き起こすのは、ミュータンス菌という細菌(むし歯菌)です。
お口の中の細菌は、抜歯などの出血をともなう歯科治療や歯みがきなどによって血液中に入り込むことが知られています。そして、むし歯菌も体中をめぐって全身に影響を及ぼすことがわかってきました。
近年、特に関連が明らかになってきているのが、脳と心臓です。これはむし歯菌も歯周病菌のように、脳卒中(脳血管疾患)や狭心症・心筋梗塞(冠動脈疾患)などを引き起こす動脈硬化の発生に関係しているからと考えられています。

むし歯菌と特に関連の深い病気

  • 脳出血
    脳出血の患者数、死亡数は減ってきていますが、高齢になるほど発症する人が増えるため、油断はできません。
     脳の血管は、不適切な生活習慣や加齢によって柔軟性を失い、もろくなります。このような状態の血管にむし歯菌がつくと炎症が起こり、血管壁が破れやすくなることが近年の研究によって解明されました。
     このことから、適切なお口のケアと歯科治療によってむし歯菌を減らすことが、脳出血の予防につながる可能性があると期待されています。
  • 心臓病
    心臓病のある人では、心臓の弁膜や内膜にむし歯菌のかたまりができることがあります。実際、手術で摘出された心臓弁膜症の人の弁を調べたところ、半数以上にむし歯菌のDNAが検出されました。
     心臓弁膜症とは、心臓にある4つの弁のいずれかが開きにくくなったり、閉じにくくなったりする病気です。心臓に負担がかかり続けるため、やがて心不全になります。
     心臓弁膜症を引き起こす原因には、加齢や動脈硬化のほかに感染症もあげられています。また、心臓弁膜症がある人は、命の危険もある「感染性心内膜炎」が起こりやすくなることがわかっています

原因菌も関係があるのか...そうなると、毎日、歯を磨くことが本当に重要だね。

ヒデヒコ
キョウコ

他にも、感染性心内膜炎という病気もあるの。

感染性心内膜炎って?

心臓の内側をおおっている内膜に細菌などが感染して炎症が起こる病気です。発熱などの症状が現れ、治療が遅れると心不全を引き起こしたり、心臓の中にできた細菌のかたまりが脳に流れ込んで脳梗塞の原因になったりすることがあります。
出血をともなう歯科治療が最大の要因とされているため、心臓弁膜症のある人は、事前に抗菌薬を使って予防する必要があります。

色々な病気に関係しているんだね。
何か予防するための良い方法はあるのかな?

ヒデヒコ
キョウコ

最近だと、フッ素入りのハミガキ剤が売っているから、それを使うのが効果的よ!

「フッ素」でむし歯に負けない強い歯を!

むし歯菌がつくる酸が歯の硬組織成分であるリン酸カルシウムの結晶を溶かしてしまうことを「脱灰」といいます。脱灰は食事の際に口腔内が酸性になると起こりますが、唾液の中和作用と唾液中のカルシウムによって「再石灰化」が起こるので、脱灰と再石灰化のバランスがとれていれば、むし歯は生じません。
フッ素は歯のカルシウムと結合することで脱灰を抑え、再石灰化を促進する作用があります。フッ素配合のハミガキ剤を使って、むし歯に負けない強い歯をつくりましょう。

そうなんだね!
早速買いに行かなきゃ!ウチにもあったかな?

ヒデヒコ
キョウコ

うちのハミガキ剤はちゃんとフッ素が入っているわよ。
最後に健康寿命について説明するわね。

健康寿命を延ばすためには歯と口のケアを!

寿命が延びるだけでは意味がない?

  • 日本は健康大国と呼ばれ、世界でもトップクラスの長寿国として名を馳せています。
    しかし、医療の発達によって平均寿命は延びていますが、これからは“健康寿命”を延ばすことが大切です。

“噛む”ことで健康寿命が延びる

健康寿命を延ばすのに重要なポイントとなるのが歯と口の役割。
例えば、わたしたちが毎日無意識にしている「噛む」という行為は、単に食べ物・栄養をからだに摂り入れるだけでなく、実は健康寿命を延ばすために重要な行為なのです。

  • 歯と口の病気を防ぐ
    噛むことで分泌される唾液は口内を浄化してむし歯や歯周病を防ぐ。
  • 脳の発達・認知症の予防
    口の開閉により脳に酸素や栄養が送られ、脳細胞が活性化する。
  • 発音・表情がよくなる
    口周りの筋肉を使うことで発音・表情がよくなる。
  • 肥満を防ぐ
    よく噛むことで満腹感が得られ、食べすぎを防いでくれる。
  • 体力の向上
    歯を食いしばることができることで「ここ一番」の場面で力を出せる。
  • 胃腸の疲れが少ない
    きちんと噛まないで飲み込んでしまうと、胃腸の負担を招く。

しっかり噛んで食べて、健康的に長生きしたいね!
キョウコの料理は美味しいからこれからもしっかり噛んで味わって食べるよ!

ヒデヒコ
キョウコ

ありがとう!
今夜の夕食も期待しててね!

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