インタビュー時年齢:40歳(2017年2月27日)
子どもが生まれる前に夫婦で旅行で訪れた離島が、自然が豊かながら極端に生活に不便なこともなく、子育てしやすい環境であったことから、長女を出産後、夫とともに転勤を希望して移住した。その後次女が生まれたので育休が続いているが、いずれは職場復帰を考えている。
長女は下の歯が癒合歯といってくっついた状態で生えているところがあり、将来生え変わりの時にどうなるか少し心配だが、むし歯もなく、特に問題はなかった。一方、次女は1歳7か月の時に「初期むし歯です」といわれた。すぐに治療は必要ではないといわれたにもかかわらず、「自分で歯を磨けない子どものむし歯は親の責任で、母親として失格ではないか」と動揺してしまった。しかし、年に数回都区内に戻る際に子どもたちの歯科健診をお願いしていた歯科医師に改めて診てもらったところ、「これはむし歯ではなく歯石」といわれて安心した。
島では1歳児から歯科健診があり、乳幼児にはフッ素券といって年に3回分の歯科相談無料券が配られるが、むし歯ではないのにむし歯だといわれたことや、むし歯になったらなったで、なぜなったのか、この先どうしたらこれ以上深いむし歯になるのを防げるのか、といったことを教えてもらえなかったことから、集団歯科健診には意義が感じられなくなって、無料券も使わずに余らせてしまうようになった。
また、歯科健診では母乳哺育についても、むし歯になる、出っ歯になるといって、1歳6カ月までに断乳するようにアドバイスされるが、子どもをむし歯にしないことが究極の目的ではなく、その子がまっすぐに育っていくのをサポートするための歯のケアだと思うので、無理やりやめようとは思わない。
丈夫な歯を作るためには、そうしたことよりも食生活や外遊びをすることのほうが大事だと思う。自分も夫も歯ではずっと苦労してきたので、夫婦で話し合って3歳になるまでは砂糖を含んだお菓子は与えないようにしようと決めている。自分の親も砂糖の害を気にして小学校に上がるまでは甘いものは食べさせてもらえなかったが、そのおかげで子供のころはむし歯はできなかった。
自分が初めてむし歯になったのは高校生の頃だが、その頃は真面目に、ごく早期のむし歯でも歯科医院で治療を受けていた。大学生になると生活が不規則になり、食生活にも乱れが出てきて、一度治療した歯がまた悪くなるというのを繰り返すようになったが、そのときもなぜそうなってしまうのか、どうしたら状況を改善できるのかということについて歯科医師から指導はなかった。ただ漫然と通っては削って治療することを繰り返すうちに、歯を1本失い、また隣の歯も上の歯も下の歯も駄目になっていくという状況になってしまった。
その後、妊娠中に歯周病になり、出産を待って、歯を抜いてインプラントを作ることになった。仕事がら人前に立つことが多く、年齢的にも入れ歯では堂々と生きることができないと思い、インプラントを選んだが、これから子育てでお金がかかるときに、子どもより自分を優先してしまったのではないかという思いがあり、非常につらかった。こうした経験から歯というものはなおざりにされがちだけれども、実は生きていくうえでとても大事なもの、その人の尊厳にかかわるものだと思うようになった。子どもたちには自分に自信を持って生きてほしいし、歯がすべてではないが、その一部だと思っている。