インタビュー09インタビュー時年齢:54歳(2017年1月15日)
再生時間:03:10 アップロード日:2017年11月09日
ところが2週間目ぐらいになった時に、もうそれどころじゃないんですよ。毎日じわじわこの辺がやられるんですけど、あのー、まず喉が痛くなってくる。まあ火傷ですもんね。で、痛くて、食べるものやっと飲み込めるようになったのに痛くて飲み込めない。
で、また、あのー、麻薬の痛み止め出してもらって、あの、とにかく胃ろうに変えちゃうと大変なんで、もう何としても口から食べようよということで先生も言って、痛み止めで痛みを止めて、その間に流し込むと。
ところが今度は(笑)。放射線のせいでこの辺、舌とか当てるんで、味がだんだんなくなんですよ。そうすると、今までは味が頼りで、何とか痛いのは我慢すりゃ何とかなると思ってたのに、今度味覚がゼロになっちゃうと、もうこれ食べ物じゃないんですよね。だからみんな粘土みたい。もう何か、だんだん口が体が、これは食べ物じゃないって拒否し始めるんです。もう飲めないんですよね、だから。ゲーってなっちゃって。それはもう、3週間4週間、1カ月ぐらいたったころが最悪ですよね。
もうどうやって食べ物を口から流し込むかっていうの格闘ですよね。いろいろ工夫して、何せ何の味もないんで。いろいろやってみると、どうも生暖かいものは甘みを感じるんですよね。甘みってのは舌じゃないんですよ。この辺の頬の内側とか歯茎とか。で、何の、その生暖かい、普通に食事したら、あのー、人間の体温ぐらいの食べ物ってなんか気持ち悪いじゃないですか。もう少し熱いものとか冷たいものがいいんだけど、体温と同じぐらいの食べ物って、何か気持ち悪い感じがするんですけど。それが一番食べれるんですよ。
で、この、何か感じる甘みっていうのは何だろうって思ったら、誰かに言ったらそれだって言われたんだけど、多分、生まれたての赤ちゃんが、お母さんの母乳吸う時のあの感じじゃないのと、体温もそうだし。あ、そうかもしんないと。いろいろ思い起こすと、僕は手術して嚥下の障害になって、上手く咀嚼もできなくて、放射線で味もなくなって、喉も痛くて、上手く飲めないって、最悪の時に、で、やっと全部の治療が終わって、まあだんだんだんだん復帰するんですけど。生まれたての赤ん坊は、人が育って人間になって、自分で食べれていくっていう過程を、もう一度意識がはっきりしてるなかでやってるっていう感じですよね。