CHAPTER3
発達不全のチェックポイント
乳児期(出生〜12か月ごろ)
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- チェックポイント
- 授乳時に乳首が痛んだり、出血したりする
- 対処法
- 原因は乳首にしっかりと吸いつけず乳首の先だけを吸っていることにあるので、大きく口を開けたときに深く吸わせるようにする
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- チェックポイント
- 離乳食開始後、くちびるとあごを閉じて食べ物を食べ、舌や歯ぐきでつぶして飲み込めない
- 対処法
- 離乳食の形状(量/硬さ)を調整して舌でつぶせる硬さにする
1歳近くになってもくちびるの動きや噛む動作がうまくできていないときは歯科を受診する
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- チェックポイント
- ひんぱんにむせる
- 対処法
- 食べ物の食べやすさや、食事の姿勢、介助の方法などを修正しても改善しない場合は歯科を受診する
哺乳におけるお口の3つの働き
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- ❶吸着
- 口を広げて乳首をぴったりくわえ込む
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- ❷吸いつく
- 舌を乳首に巻きつけて母乳をしぼりだす
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- ❸飲み込み
- 舌の根本を持ち上げて母乳を食道へ流す
この3つの動きが協調することで、上手に母乳を飲むことができるようになり、口腔機能の発達が始まります。
人工乳の場合はそしゃく型(クロスカット)の乳首のついた哺乳瓶を用いることで、母乳時と同じ口や舌の機能を育てることができます。
クロスカット
傾けてもミルクは出ず、お口の動きと吸う力でクロスカットが開き、飲む量を調整できる
幼児期初期(12〜18か月ごろ)〜幼児期後期(3〜6歳ごろ)
噛む機能の発達不全
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- チェックポイント
- 前歯でのかじりとりやすりつぶしができていない
- 対処法
- 食べ物の硬さや形状、大きさを変える
改善しない場合は、歯科を受診する
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- チェックポイント
- 肉類や硬い物が噛みつぶせずに、いつまでも口の中に残っているか吐き出す
- 対処法
- 初期: 食べ物を歯ぐきですりつぶせる軟らかさにする形状も小さくする
中期: 食べ物を軟らかめにして、形状も一口サイズの大きさにする
後期: 乳歯の生え具合や噛み合わせを見て、噛めるような歯であることを確かめ、食べ物の形状や硬さ、大きさを食べやすいように調整する
これらの対処をして改善しない場合は、歯科を受診する
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- チェックポイント
- 噛まないで丸のみする
- 対処法
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- 初期:一口量を口に入れて、よく噛んで食べるように声かけをしてお手本を見せる
- 中期:食べ物を口に詰め込まないようにさせ、よく噛めない場合は食べ物を軟らかめにする
- 後期:乳歯の生え具合や噛み合わせを見て、食べ物の硬さや大きさを食べやすくする
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- チェックポイント
- 食べるのに時間がかかる
- 対処法
- よく噛んで食べているのであれば心配はない時間がかかる原因がよく噛めない場合は、上記の対処をする
テレビなど気が散ることが原因であれば、食事に集中できる環境にする
口を閉じる・飲み込む機能の発達不全
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- チェックポイント
- 噛みつぶした食べ物のかたまりをうまく飲み込めない(丸のみ・乳児の飲み込みをしている)
- 対処法
- 食べ物の形状や大きさを変えてみて改善できなければ歯科を受診する
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- チェックポイント
- ひんぱんにむせる(食べ物の形状や大きさ、食事の姿勢、介助の方法などを修正しても改善しない)
- 対処法
- 機能低下が疑われるので、歯科を受診する
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- チェックポイント
- 食べているときに舌が出る
口を開けたまま食べている(普段から口が開いている/口呼吸が多い)
食べこぼす(くちびるがうまく閉じていない) - 対処法
- 口のまわりの筋肉を鍛える訓練を行う(くちびるをしっかり閉じる訓練、発音と口の機能の訓練)
初期で哺乳を続けているときは卒乳を考える
手と口の協調運動の発達不全
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- チェックポイント
- 手づかみ食べをしない、できない
- 対処法
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- 初期:手づかみ食べや食べ物のかじりとりをする機会を増やすようにする
かじりとりやすいおにぎりやバナナなどの食べ物を用意する
手に過敏症がある場合は、感覚遊びを取り入れる - 中期:手づかみ食べに戻す必要はないが、食具を使う際の手と口の協調がよくない場合は、手づかみ食べから練習し直すことも必要になる
- 初期:手づかみ食べや食べ物のかじりとりをする機会を増やすようにする
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- チェックポイント
- 食具を使えない、使わない
- 対処法
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- 初期:食事の介助をやめて、スプーン→フォークの順で少しずつ使わせ、自分でやりたいという気持ちを大切にする
- 中期:食事の介助をやめて、スプーン→フォークの順で少しずつ使わせ、自分で食べられることをほめて促す手と口の協調がよくない場合は、手づかみ食べから練習してみる
- 後期:スプーン→フォークの順で少しずつ使わせていくようにする年中~年長にかけて箸遊びなどもするようになるので、フォークが使えれば箸も使ってみる
話す機能、その他の口腔機能の発達不全
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- チェックポイント
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発音時に言葉の置換、省略、ゆがみがみられる
- 置 換:「すいか」→「すいた」 /「さかな」→「たかな」
- 省 略:「てれび」→「てえび」 /「ごはん」→「ごあん」
- ゆがみ: 日本語の音として表せないゆがみ音、発音の異常によって生じるゆがみ音
- 対処法
- 口腔機能の発達不全が考えられるので歯科を受診する
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- チェックポイント
- さ行、た行、ら行が正しく発音できない
- 対処法
- 舌の裏側のひだ(舌小帯)が短いことも一因と考えられるので、歯科を受診する
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- チェックポイント
- 話すときに舌が前に出る
- 対処法
- 悪習癖がある場合は注意をする
口のまわりの筋肉の不調和が考えられる場合は歯科を受診する
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- チェックポイント
- 哺乳を求める
食べているときに舌が出る - 対処法
- 初期・中期:様子を見る
後期:時期的に卒乳を進める
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- チェックポイント
- 口を開けてポカンとしている
鼻呼吸をしていない - 対処法
- 咬合の発育に影響を与えるので歯科を受診する
学童期(6~12歳ごろ)
食べる機能の発達不全
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- チェックポイント
- お茶や水で流し込んで食べる
- 対処法
- 胃液が薄まり消化に悪影響を与えたり、水分で満腹になったりするので、よく噛んでだ液を出して食べるように指導する
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- チェックポイント
- 口を開けたまま食べる
口呼吸が多い
食べこぼす(くちびるがしっかり閉じない) - 対処法
- くちびるを閉じるように声かけをする
口のまわりの筋肉を鍛える訓練をする(あいうべ体操、風船ふくらましなど)
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- チェックポイント
- 食べづらそう
- 対処法
- 乳歯が抜けて永久歯が生えず噛みにくい場合、あるいは、むし歯などがある場合は、歯科を受診する
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- チェックポイント
- よだれをたらす
- 対処法
- 学童期以降ではまれなため、歯科を受診する
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- チェックポイント
- 噛まない(丸のみする)
- 対処法
- しっかり噛んで食べるように指導する
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- チェックポイント
- 肉類などを飲み込めない、飲み込まない
- 対処法
- 歯の生えかわり具合や噛み合わせを見て、食べ物を食べやすい硬さや大きさにする
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- チェックポイント
- 前歯でかじれない
- 対処法
- 歯並びが不ぞろいで噛めない場合は歯科を受診する