PURPOSE
開催趣旨フレイルは、国民の健康の維持増進に果たす役割について、高齢者にとって重要な取り組みであると、医療計画等を通じて示されています。オーラルフレイルはフレイルの推進と共にあり、高齢者歯科保健においても、介護分野においても、重要な取り組みと言えます。オーラルフレイルにおいて、近年の知見で共通することは、舌圧、発音機能、摂食・嚥下機能、唾液分泌機能等の諸機能の衰えを超えて「歯の欠損がオーラルフレイルに最も影響する」ことです。
「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針2021)」に「オーラルフレイル対策・疾病の重症化予防にもつながる歯科医師、歯科衛生士による歯科口腔保健の充実」とオーラルフレイルが明記されるなど、国及び地方でオーラルフレイル対策への機運が高まってきております。しかしながら、オーラルフレイルへの理解・認識は十分とは言い難いことは否めません。
今回、地域での取り組みを中心に、健康な口腔環境の保持・増進を図る8020運動を踏まえて、全ライフステージにおける口腔健康管理とオーラルフレイル対策を通じた「口腔の諸機能の衰えの予防」の重要性を広く国民に伝えることを目的に、下記講演およびシンポジウムを企画しました。多くの皆様にご参加頂き、情報と意見を交換する場となることを願っています。
PROGRAM
プログラム基調講演「口腔健康管理とオーラルフレイルの地域での展開に向けて」
(公社)日本歯科医師会 常務理事 山本秀樹氏
「口腔ケア」は国民に広く浸透してきたが、用語の定義が曖昧なために、歯科医療関係者と国民が理解している口腔ケアの概念には隔たりがあり誤解が生じていた。そこで改めて、「口腔ケア」「口腔健康管理」「口腔衛生管理」「口腔機能管理」の用語の定義が重要となってきている。
オーラルフレイルは、医療・介護の現場で口腔領域の軽微な(ささいな)機能低下を看過または見過ごさないことの重要性を摂食・嚥下機能低下予防の視点からの課題と位置付け、高齢期における口腔機能の虚弱化を焦点化することを意図している。
超高齢社会を迎えた今、国民への『口腔健康管理』『オーラルフレイル』の正しい認識と普及、地域の歯科診療所や通いの場を通じたオーラルフレル対策の適切な実施が求められている。
講演1「2040年を見据えた8020運動の展開 ~歯科保健医療を取りまく環境~」
厚生労働省 医政局歯科保健課長 小椋正之氏
2019年10月に消費税10%の対応がなされ、「社会保障・税の一体改革」は一区切りが着いたところであるが、高齢者数がピークを迎える2040年頃の社会保障制度を展望すると、社会保障の持続可能性を確保するため国民的議論が必要であり、今後の歯科保健医療提供体制についても健康寿命の延伸等を踏まえた対応が必要となっている。
講演2「地域における口腔機能低下予防対策の現状と課題」
国立保健医療科学院 統括研究官 福田英輝氏
全国の市区町村調査によると「口腔体操や嚥下体操を普及している」自治体の割合は55%でした。この割合は、自治体の規模別に差がみられるものの、歯科口腔保健計画を策定し、関係者を交えた会議体を設置している自治体では大きいことが示されました。地域での口腔機能低下予防対策を進めるためには、事業の計画・評価を可能にする体制づくりが重要だと考えられました。
講演3「地域におけるオーラルフレイル対策の取り組み① ~広島県竹原市の事例~」
(一社)広島県歯科衛生士会 会長 三好早苗氏
高齢者のフレイル予防には、適度な運動、口腔機能の維持、低栄養の予防、社会参加の促進が重要である。今回は、広島県竹原市の「通いの場」でのフレイル・オーラルフレイル予防の取り組みと歯科衛生士の関わりを紹介します。
講演4「地域におけるオーラルフレイル対策の取り組み② ~北海道札幌市の事例~」
(一社)北海道歯科衛生士会 会長 武藤智美氏
北海道歯科衛生士会では札幌市からの委託を受け、オーラルフレイル予防の観点から通いの場での人と人とのつながりを通じて、介護予防に資する住民主体の活動が広がっていくような地域づくりを目指し、札幌市地域口腔機能向上専門職派遣事業を展開している。今回はその流れと内容をご紹介する。
講演5「オーラルフレイル対策の活性化に向けて
~2040年への歯科イノベーションロードマップ~」
日本歯科医学会 総務理事 小林隆太郎氏
誰もが健康で長生きしたいと考えます。しかし気持ちだけでは目的は達成できません。健康寿命延伸のための条件として、がん、心臓疾患などの1次、2次予防をより一層進めていくこと、筋骨格系疾患への対応、メンタルヘルスへの配慮、そして、口腔健康管理の重要性が挙げられ、オーラルフレイル対策の活性化が鍵となります。