近年の遺伝子解析編集技術の進展は著しく、医療や食の世界も大きく変容しようとしている。
ゲノム解析等により、全身疾患に対する口腔内細菌の関与がより明らかとなり、いわゆる口腔感染症を予防し、健康・健全な歯と口腔環境を保つための予知性の高い対策が示されることが期待される。
新型コロナウィルスによる感染症の世界的な蔓延により、感染症への人々の関心が高まっている今日、本フォーラムでは財団設立20周年を記念し、歯科医療の根幹を為す細菌感染の制御に焦点を当て、ゲノムレベルから口腔の健康を増進していくための現状や課題、展望を考察する。
8020達成者の順調な増加による「20本以上の歯が残ることが当たり前となる社会」に向けて、歯を残すことができる時代に歯科が何を果たせるか。
感染症にフォーカスし、感染制御による歯科医療の近未来図が示される機会としたい。
「ゲノム編集が切り拓く新たな時代」
近年注目を集めるゲノム編集技術は、基本的には標的配列特異的なヌクレアーゼであり、
あらゆる細胞種・生物種でのゲノムDNA配列改変を可能にする。
本講演では、こうしたゲノム編集の基本要素と、その発展の歴史を解説する。
また、ゲノム編集の医療や、農業・畜産への応用例を紹介し、ゲノム編集技術が持つ広汎な可能性を示したい。
2004年 | 東京大学理学部生物化学科卒業 |
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2009年 | 東京大学大学院博士(理学)課程修了 |
2009年4月 | 東京大学分子細胞生物学研究所 助教 |
2011年7月 | 米国グラッドストーン研究所 UCSF ポスドク |
2016年1月 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 再生医療プロジェクト プロジェクトリーダー |
2019年4月 | 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 連携准教授 |
2019年 | 文部科学大臣表彰若手科学者賞 受賞 |
「心臓や脳血管を攻撃するミュータンスレンサ球菌」
ミュータンスレンサ球菌はう蝕の主要な原因細菌として知られていますが、感染性心内膜炎の起炎菌にもなり得ます。
最近の研究から、約10人に1人が保有している特殊な菌株の持つ病原性が明らかになってきました。
この菌株は脳血管障害にも関与することが分かってきましたので、臨床的なデータを添えてお示しいたします。
1996年 | 大阪大学歯学部卒業 |
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2002年 | 博士(歯学)(大阪大学) |
2014年 | 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子感染制御学講座 小児歯科学教室 教授 |
2018年 | 大阪大学大学院歯学研究科副研究科長、大阪大学歯学部副学部長 |
日本小児歯科学会常務理事(学術委員長)、専門医指導医 | |
日本小児歯科学会近畿地方会会長 | |
日本循環器学会「感染性心内膜炎の予防と治療に関する ガイドライン (2017年改訂版)」作成班員 |
「ウイルスと細菌の重感染機構」
インフルエンザによる主要な死因は細菌性肺炎の合併である。
本講演では、口腔・咽頭に生息するレンサ球菌と
インフルエンザウイルスによる重感染がもたらす重症化機構について紹介する。
特に、ウイルス感染組織への細菌の定着と侵襲性に関与するストレス応答分子群について概説する。
1989年3月 | 大阪大学歯学部卒業 |
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1993年3月 | 大阪大学大学院歯学研究科臨床系博士課程修了 |
1993年5月 | 米国アラバマ州立大学バーミンガム校メディカルセンター研究員 |
2006年5月 | 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子感染制御学講座 教授 |
2000年~2016年 | 歯科基礎医学会 評議員 |
2003年~現在 | 日本細菌学会 評議員 |
2012年~現在 | 日本細菌学会 理事 |
2016年~現在 | 歯科基礎医学会 代議員、常任理事、理事 |
2018年~現在 | 日本細菌学会 監事 |
2005年 | 日本細菌学会 小林六造記念賞 受賞 |
「細菌叢解析からみたデンタルプラークの生態」
歯周炎は、感染症と言われるが、“感染”というイメージは少ない。
その病因は、歯肉縁下のデンタルプラークが関わるとされているが、そこには常に数百種の細菌が定着し、細菌叢を形成している。
細菌叢が関わる感染症とはどのようなものであるのか?菌叢全体の網羅的解析等から見たプラークの生態から歯周炎を考えてみる。
1985年3月 | 東京歯科大学卒業 |
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1989年3月 | 東京歯科大学大学院歯学研究科修了(歯学博士) |
1992年2月 | 米国テキサス大学サンアントニオ校 小児歯科学 ポストドクトラルフェロー |
1993年7月 | 米国ニューヨーク州立大学バッファロー校 Oral Biology リサーチアソシエート |
2008年4月 | 東京歯科大学 微生物学講座 教授 |
2000年 | 日本細菌学会 黒屋奨学賞 受賞 |
歯科基礎医学会評議員、日本細菌学会評議員、日本歯周病学会理事 |
「歯科医療の未来図と8020運動」
8020運動の結果、日本人の歯は明らかに長持ちになった。一方、我が国の超高齢化に歯止めはかからない。
2040年問題が待ち構えている。食べることは生きる事、健口は命を支えている。
未来の命を輝かせるため、日本歯科医学会は2040年への歯科イノベーションロードマップを作製した。
先端科学が歯科医療を大幅に進化させる。
1984年 | 大阪大学歯学部卒業 |
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1992年 | 米国ニューヨーク州立大学歯学部 ポスドク |
2000年 | 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 教授 |
2011年 | 大阪大学大学院歯学研究科 口腔科学フロンティアセンター長(~2014年3月) |
2015年 | 大阪大学大学院歯学研究科長(~2019年3月) 大阪大学歯学部長(~2019年3月) |
2019年 | 日本口腔衛生学会 副理事長、次期理事長(2021年~) |
2019年 | 日本歯科医学会 重点研究委員会 委員長 |
「フォーカス!感染予防
~未来歯科医療の幕開け~」
コーディネーター
蓮池芳浩専務理事
パネリスト
仲野和彦氏
パネリスト
川端重忠氏
パネリスト
石原和幸氏
パネリスト
天野敦雄氏
フォーラムの開催とあわせて、会誌8020にて特集を掲載しています、あわせてご覧ください