インタビュー01

インタビュー時年齢:56歳(2016年2月20日)

プロフィール

52歳の時に人間ドックで乳がんが見つかり、がん診療連携拠点病院で乳房温存手術と放射線治療を受けて、抗がん剤治療(TC療法)を受けた。抗がん剤の点滴を受けて数日後、白血球の値が下がる頃になると、激しい歯肉炎に悩まされるようになった。それまでも疲れた時に歯ぐきから出血したり、歯ぐきが腫れたりすることがあり、歯科医から歯周病を指摘されていたが、抗がん剤治療時の歯肉炎はそれまでに経験したことのないつらさで、上あごの左半分が腫れあがって、痛みでものが噛めず、夜も眠れない状況になった。

同じ抗がん剤の副作用で目まいが起きた時には、院内の耳鼻科を紹介してもらえたが、歯肉炎については、電話で相談しても地元の歯科医院に行くように言われただけで、紹介状ももらえなかった。10代の頃からかかりつけの歯科医院で相談したところ、痛んでいる左上の奥歯は歯周病が進んでいて歯根もあまり残っていないので、抜いたほうがいいと言われた。しかし、歯列矯正のために永久歯を上下計4本抜歯しているため、それ以上歯を失うことには抵抗があり、何とか保存的に痛みを抑えてほしいと頼んで、1回目は痛み止めを処方してもらい、氷を口に含んで外からも冷やすなどして乗り切った。しかし、次のクールでもまた痛みが強くなり、今後も治療が続くことを考えると、もう抜くしかないと思って、抜いてもらったところ、痛みはてきめんに治まった。

抗がん剤治療を受ける前に、予想される副作用として吐き気や味覚障害の他、口内炎については説明を受けていたが、歯周病の悪化で歯肉炎が起きることは聞いていなかった。手術前にグラグラしている歯があるかどうかは聞かれたが、抗がん剤治療の前に歯周病があるかどうかは聞かれなかったと思う。がん治療を行う病院では、抗がん剤治療が歯や歯ぐきに及ぼす影響についても事前説明をすべきだと思うし、もっと歯科との連携を取ってほしい。

現在、抜歯したあとはそのままになっているが、特にそれで不都合はない。しかし、たとえ1本でも歯を失ったことはショックであり、その隣の歯も歯周ポケットが深くなっているので、少しでも長く保たせるようにブラッシングやフロスなどで丁寧にケアをしている。それまでは歯磨きをするときはむし歯のことだけを意識していたが、歯を失くしてからは「歯周病は侮れない」と思うようになり、時間をかけて歯ぐきのケアをするようになった。84歳の実母は自分の歯がまだすべて残っており、肉でも何でも元気に食べられるのを見ていると、自分もそうなりたいと思う。